日本には16種類もの方言が存在していて、それぞれの方言には独特な訛りも存在します。
地方に住んでいる人の中には、日常的に使っている言葉やイントネーションが、実は方言であることを知らない人もいるでしょう。
私も長年福岡に住んでいるものですから、初めて東京に出てきた時は「ほげる(穴が開くの意)」を標準語だと勘違いしていました。
コールセンターで働くオペレーター達は、原則標準語のみを使用するようにと、研修で教わります。
なぜなら、コールセンターには全国のお客様から入電があるからです。
ただ、長年使用してきた方言や訛り全てを、突然標準語にしろと言われても、中々できるものではありません。
では、コールセンターのオペレーター達は、どのようにして方言や訛りを抑えて、標準語で話しているのでしょうか?
今回の記事では、オペレーター達の方言・訛り事情、それから方言・訛りが強いお客様から入電があった時の対処方法を紹介していきます。
実は敬語で話すと方言が目立たなくなる
実はコールセンターで働く上で、そこまで方言を意識する必要はありません。
なぜなら、これは私自身がコールセンターに入社して驚いたことですが、所謂タメ口と敬語では、方言が含まれる割合が大きく変わるからです。
敬語になると、9割近くの方言が標準語になります。
わずかに存在する方言の敬語と言えば、例えば広島弁だと「◯◯さん、おってですか?(いらっしゃいますか?の意)」や、関西弁の「〜はる(◯◯してはる)」など、その方言を使用している本人達が「これは方言だ」と理解できる、あからさまな言葉ばかりです。
私は筋金入りの博多っ子ですが、博多弁も同様で、博多弁の敬語にはあからさまに方言と分かる言葉しか存在しません。
例えば「◯◯しよっとですか?(◯◯しているのですか?の意)」などです。
こうした敬語の方言を、方言であると理解していない人は少ないでしょう。
地方によっては、一般的に浸透している敬語の方言も少なからず存在します。
そういった敬語の方言は、大多数の方が「標準語である」と勘違いしている可能性があるので、研修の段階で全てピックアップして、標準語に直して話すよう講習を受けます。
ただ、どんな地域でもその数は少ないので、あまり気にしておく必要はありません。
問題は訛り。こればかりは強く意識しないとついつい出てしまう
どちらかと言えば、いくら意識していてもついつい出てしまうのは訛りの方です。
頭では分かっていても、絶対に出てきます。
ただ、日頃から訛って話している以上、仕事中も訛るのは仕方のないことなので、ちょっとやそっと訛るくらいで注意されることはありません。
というか、地方のコールセンターだと、ベテランのオペレーターや社員であっても、訛っている時があります。
訛っているからと言って、お客様から指摘を受けることは少ないので、方言同様にそこまで心配しなくて良いです。
ただし、クレームに発展しているお客様だと「何?聞き取れないんだけど!」と、難癖をつけてくる方もいるので、怒っているお客様には要注意です。
一方で、普通のお客様の場合だと「あら?◯◯(地域名)の人?」と関心を持ってくれて、そこから和やかな雰囲気になることもあります。
方言にせよ訛りにせよ、本来は標準語で話すのがコールセンター側としては好ましいので、無理にとは言われないでしょうが、できるだけ標準語を意識して応対にのぞむと良いでしょう。
そして注意しておきたいのが、その方言や訛りを知らない人からすると、たとえ方言といえど、失礼に聞こえてしまう言葉もあるという点です。
例えば、関西弁の敬語では、語尾に「ね」が付く時がありますが、恐らく関西以外に住んでいる人からすると、タメ口で話をされていると受け取ってしまいます。
神経質なお客様だと、やはりイチャモンをつけてくる場合があるので、十分に注意しておきたいですね。
お客様の方言と訛りが強すぎる時
逆のパターンで、「お客様の方言と訛りが強すぎて、何を言っているのか全く聞き取れない」というケースもあります。
例えば、佐賀県にお住まいの年配の方から入電があった場合
「こげん操作の難しかスマホば、よう分からんでさわいよったけん、画面のどがんじゃいいちのーたばい」
訳→「こんなに操作が難しいスマホを、よく分からずに触っていたから、画面がどうかなってしまった」
地方の年配の方は、上記のような方言で遠慮なく話してくる時があります。
こんなに激しい方言で話されても、こちらとしてはクエスチョンマークしか浮かんできません。
ただ、いくら頑張っても方言を聞き取ることはできないですし、憶測で内容を判断して、実は全然違うことを言っていたとなると、クレームに発展しかねません。
なので、方言が強すぎる場合は、素直に「お客様、申し訳ございませんが、ちょっと方言が強すぎて聞き取れないです…」と伝えます。
すると、大抵は「え?あら?これ佐賀に繋がっとんじゃなかね?ごめんねー。」と言ってくれ、お客様もできるだけ標準語で話してくれるようになります。
中には、「ごめんねー。」と言いながら、続けて激しい方言で話してくるお客様もいますが…。
方言や訛りには何故か温かみを感じる
方言や訛りは不思議なもので、何故か温かみを感じてしまうのは私だけでしょうか。
決して標準語が冷たいと感じるわけではありませんが、方言や訛りで話されると何故か親近感が持てます。
東京に住んで長年経つお客様の中にも、オペレーターの訛りを聞いて「もしかして〇〇(地域)の人?私も昔住んでいたんですよ」と、良い感触を持ってくれる人がいるくらいです。
ただし、先述したように基本的には標準語で話すことを原則としているので、その点は軽く意識しておいた方が良いです。
お客様の中には、方言や訛りを嫌う方もいるかもしれません。
方言や訛りが出ることは、決して悪いことはありませんが、コールセンターに電話してくるお客様には様々な考えを持つ人がいるので、標準語で対応する方が無難なのです。